【おすすめ本 感想】 アルファベット そして アルゴリズム: 表記法による建築――ルネサンスからデジタル革命へを読んでみた

2021年3月3日

アルファベット そして アルゴリズム: 表記法による建築――ルネサンスからデジタル革命へを読みました。

「デジタル・テクノロジーによって、今後、建築はどう変わるのか、それに関わる人はどうすればその変化を生き残れるのか」について歴史的な裏付けをした上で書かれているとても面白い本でした。

ネタバレを含みますが、ある程度全体像を理解している方が読み進めやすいこともあると思うので、
・これから読む人が大まかな流れを理解して、ラクに読み進められるようにする
・自分の知見から本の内容と紐づけたこと
などこれから読む人の助けにもなる内容を心がけて書いていきます。

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あらすじ 大まかな流れ

この本は

・可変性、同一性、微分的差異
・興隆
・衰退
・エピローグ:スプリット・エージェンシー 建築家の力の分割と移譲

の4つの章で構成されています。

「可変性、同一性、微分的差異」で議論の全体を
「興隆」でアルベティという人を中心に同一コピーの興隆について
「衰退」で同一コピーの衰退を様々な事例と共に紹介
「エピローグ:スプリット・エージェンシー 建築家の力の分割と移譲」でこれからを生きる建築家はどうすればいいのか

について書かれていました。
個人的には、「衰退」の章に書いてある事例や、「エピローグ:スプリット・エージェンシー 建築家の力の分割と移譲」に書いてある、同一コピーが衰退した次の時代に何が来るのかのヒントになる部分がためになるなと思いました。

そのまま章の流れで読んでもいいですが
「・可変性、同一性、微分的差異
 で話の全体論を掴んで
 ・エピローグ:スプリット・エージェンシー 建築家の力の分割と移譲
 でこれからどすればいいのかのヒントを知って
 ・興隆
 ・衰退
 で歴史的裏付けや具体例を知って理解を深める」
というような読み方も面白いかなと思いました。

キーワードを解説

同一なコピー 構想する人と作る人 原作者性 可変性 インタラクター 表記法
デジタルテクノロジー アルゴリズム カスタマイズ オブジェクティル
などが個人的にはキーワードだと感じました。

その中のいくつかについてここからは
知っていると理解が深まりやすいかなと思う自分がイメージしたものを紹介していきます。

キーワードをベースにして、書いているので、まだ本を読んでない人でも楽しめると思いますし、読んだ後に、もう一度読んでもらっても理解が深まると思います。

デジタルテクノロジー オブジェクティル 可変性

現代のデジタルテクノロジーについての話で、
「バリエーションをデザインし、大量に生産する能力」について述べられている部分や、
オブジェクティルを理解する時に自分がイメージしたのは、下↓のツイートでした。

これは、Houdiniというモデリングソフトを使って、
プロシージャルモデリングをしてみたときのものです。

プロシージャルモデリングとは
高さ、奥行き、長さなどの値を変更できるようにモデリングすることで
パラメータを変化することで形を変化させることができます。

上↑ツイートの動画を再生すると、椅子の高さや幅、座るところの奥行き、足の太さ、背もたれの角度などを変更しています。
例えば、高い椅子A、幅が広い椅子B、足が太い椅子Cなどのオブジェクトを1つのオブジェクティルで表現でき、可変性がある状態で設計できています。

このようなイメージが、本の中で書かれているデジタルテクノロジー オブジェクティル 可変性の考え方に近いのかなと思いました。

構想する人と作る人 原作者性 インタラクター

構想する人と作る人の間の境界線がなくなる時代のサービスとして自分がイメージしたのは
VUILD株式会社のEMARFというサービスでした。

設計した図面を送るだけで、その図面通りに加工された木材が送られてきます。
その部材を組み立てることで誰でも簡単に家具を作ることができます。
使っている木材の加工機は本格的なものなのでかなり細かい形でも作ることができます。

木を加工するという、一般の人の多くが苦戦するであろう部分を解消したり
一枚の板に最適にパーツを並べることで使う木材のコストを最安にしたり、
木目が気になる人には自分で調整できるようにしたりと、
ユーザーの障害を取り除くことで、構想する人と作る人の境界を無くしています。

EMARFを利用するユーザーが、インタラクターとなり、それぞれの構想したものをデザインする一方で、そのユーザーのプラットフォームとなっている点で、これからの時代の原作者性を建築に一番近い分野で実現しているのではないでしょうか。

建築業界以外の人や依頼人が、自分の手で建築を作りたいと思った時に
障害となっている部分をいかにして取り除けるか、その過程で、彼らの道具となれるかが、
同一のコピーが廃れた後のプラットフォームや原作者となるポイントなのかなと感じました。

このような知見から、こんなことができるかもしれないと
考えたものを最後に書いて終わります。

バーチャルで設計したものを実現するには

マインクラフトなどゲームの世界で多くの人を驚かせたり感動させるような様々な街が作られているが、それをリアルな世界にで作ろうとならないのは何故なのでしょうか?

・キューブでの表現はリアルの世界の建築物と違いすぎる
・構造が成り立つように計算されているものではない
・地球上にない敷地で考えても作れない

など様々な理由があるかもしれませんが、
バーチャルで設計したものが実際にリアルな世界で建築になる事例が1つでもできたら
リアルの建築とネットのワールドを別で考えるという常識が壊されて
もっと建築を作る過程に様々な人が入り込む余地があると思います。

マインクラフトの建築を実現するには、細部が作られてないというのであれば
建築業界で使われているモデリングソフトを使えばいいし、
構造が成り立つかわからないというのであれば構造計算して
敷地がないというのであれば街のデータを取ってきて考える
というようにクリアしないといけないハードルはあると思いますが
これらのハードルをクリアして誰が考えた建築でも
ゲーム上で成り立てば作れる可能性があるというサービスを作れれば
デジタル時代の原作者になれるのではないか
みたいなことをと考えました。

かなり話が飛躍して実現できなさそうに感じますが
誰でもマインクラフトのデータを入れれば
構造計算できるくらいの部分的なものから考えれば実現できそうな気がします。

自分が既に知っている知見と紐づけて考えることができるのが
読書のいいところだと思います。
人によって知っている知識はそれぞれで、
他の人が読んだら、僕が拾えなかったようなまた別のアイデアが生まれると思うので、
この記事で興味を持った人は、これだけで満足せずに、ぜひ読んで見て欲しいなと思います。そして何か気づいたことがあれば教えて欲しいです。

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特に、この本では様々な歴史的裏付けを詳しく説明しているのに、
歴史の話は、前提となる知識が不足していて、
理解しきれていない部分も多々あったように感じました。
もっと歴史に詳しい人が読んだら別の知見があるかもしれません。

また、原註が最後にまとめてあるので、
それを元に周辺知識の理解を深める勉強するのもいいなと感じました。

今回は、「マリオ・カルポ」の「アルファベット そして アルゴリズム: 表記法による建築――ルネサンスからデジタル革命へ」について書きました。

他にもARCHICAD、Revit、Lumion、Twinmotion、Rhinocerosなど建築に関わる人が使う機会の多いであろうソフトに使い方に関する記事を書いています。
他の記事も見たい方はARCHICADのタグRevitのタグLumionのタグTwinmotionのタグRhinocerosのタグなどそれぞれタグでまとまっているのでのぞいてみてください。

また、名建築「落水荘」を例にRevit、Lumion、Illustratorを使って
プレゼンボードを作成する流れをまとめた記事も作成していくつもりです。

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最後まで読んでいただきありがとうございました!